保険医療のレベル

  • 2007年05月07日(月)

連休中にレインボー医学の講習会に参加した。
レインボー医学の詳しい事は改めて書こうと思う(関心のある方はホームページを検索してくださいね)。

参加者の中に古くからの友人と息子さんがいた。
息子さんは昨年歯学部を卒業し、歯科医師国家試験に合格し、先月で臨床研修を終えたばかりの新米歯科医師だ。

臨床研修の期間は指導医の指導の下で診療しなければならないが、研修期間が終了すれば自分の判断で診療に従事する事が出来る。

彼が必要な書類を提出すれば開業だってできる。
もちろん開業すればすべての責任を負わなければならず、そんな新米歯科医師が開業してもまだまだ経験不足で、様々な患者さんに十分な対応はできないだろう。

だが彼が保険医の登録をすれば保険診療ができる。

保険診療では新米であろうとベテランであろうと治療に対する点数は同じである。

彼が一時間かかって額に汗して行った治療でも、ベテランが鼻歌交じりで15分で終えた治療でも保険点数は同じである。

私が歯医者になって1年後ぐらいの時、二時間かかってもどうしても抜歯できず困っていたら、院長が見るに見かねて代わってくれた。
院長が抜歯をすると5分もしないうちに抜歯できた。

患者さんは「二時間も口を開けっ放しで大変だった」と怒っていたが、院長が「若い先生も一生懸命汗だくになってあなたのために頑張ったんだからそんなに怒らないでやってくれ」と言ってくれた。

その時の情けなさは今でも覚えている。
ちょっとしたコツを知っているかどうかで大きな差が出る事を痛感した出来事だった。

我々が休みを返上してでも研修を受けるのは、より良い治療をより効率よく出来るようになるためのことが多い。

今の保険診療の技術的なレベルは友人の息子さんのような歯医者に成り立てのレベルであるならば、たくさんの患者さんたちと触れ合いながら自己研鑽に励んだベテランのやる事は、保険診療のレベルをはるかに超えていることもあるだろう。

傲慢なように感じられるかもしれないが、26年歯医者をやってきて、人並み以上に勉強してきた自負から、友人の息子さんと同列に扱われる保険診療に不合理を感じる。

保険診療・自由診療について考える事 1

  • 2007年03月05日(月)

長年の友人であり、かみ合わせ治療のみならず様々な指導を頂いている静岡県開業の K先生が
4月一杯で保険医療を辞め、自由診療のみで仕事をするという報告が仲間内のメーリングリストにあった。

勇気ある決断に拍手!とか 私も後に続けるよう頑張ります!とか うらやましい!とか・・・

日頃 保険診療に従事している歯医者仲間達からの声を見聞きすると、みんな保険診療に満足しているんじゃないと痛感する。

現在の健康保険は昭和34年に発足した。
それから50年近い時が経過する間に、治療技術も材料も社会も大きく様変わりしたが、
保険治療で決められた治療内容はほとんど変わっていない。

保険点数は2年ごとに改訂されるが昭和58年の改訂以来マイナス改訂が続いている。

先日私の母親の入れ歯の具合が悪くなり、歯科技工士の兄と休診日に入れ歯の調整を行った。
2時間半歯科医師と歯科技工士がかかりっきりで一人の患者の治療に当たる事が保険でできるだろうか?



保険ではどれぐらい頂けるのだろう?
初診料1,800円 義歯調整料 1,000円 粘膜調整料 1,100円 
合計3,900円也
治療時間を2時間に切り捨てたとして、二人で一時間の時給は2,000円・・・
いやいや
一箱約四千円の入れ歯の適合具合を見る材料を一箱使ったのでそれだけで赤字だ!

国家資格のある専門家の時給がなんとゼロ・・・

しばらくは良かったが、また少し調子が悪いというのでもう一度休診日に調整を行った。

今の保険では義歯調整は一ヶ月に一度だけしか点数が算定できない。
粘膜調整も算定できない。
2回目の保険医療費は再診料380円のみ・・・

我が母親だから経済的なことなど気にせず十分な時間と手間と材料をかける。

他の患者さんにも同じようにやりたいと切実に思うが、それでは医院経営が成り立たない。

一般の患者にはどうしているかと言えば、予約時間の一単位15分以内で終わる。
それでも大赤字・・・

この事を正直に患者さんに言うと「高齢者が増えてゆく時代なのに国のやる事は時代に逆行している」と
怒る方があったが、医療費を抑制したい国としては高齢者が増えてゆくからこそどんどん切り捨てているのであろう。
その老人は「国は国民のことをもっと大切にするべきだ」と言っておられたが今の政治・行政を見ていると
この国をリードしている人たちは、国民のために国があるのではなく、国のために国民がいるとマジで考えているのではないだろうか?

これからますます歯科医療の切捨てが進めば、いずれ入れ歯は保険治療から外されるだろう。

お金の無い人は入れ歯を入れることが出来なくなる時代がすぐそこまで来ている!

若くても歯周病や虫歯が進んでいる患者さんで10年後・20年後大変な苦労をされるだろうと感じる方に
一生懸命説明し、定期健診の案内をしても次第に来院されなくなる方がある。

本当に困ってから後悔する方を数多く診て来た。

自己責任・国はこの言葉を錦の御旗に弱者を本当に切り捨てて行く。

あなたはそれでもいいですか?

一回では書ききれないので続編に続く・・・

口から食べることの大切さ

  • 2006年12月22日(金)

介護の現場などの報道で、入れ歯が合わないと言って食事の時テーブルに入れ歯を出して食事している老人の姿を見ることがある。

先日久しぶりに来院された80歳の婦人は「もう年だから新しい入れ歯を作ろうとも思っていなかったが、部分入れ歯を支えている歯が抜けてしまって、すぐはずれてしまいます。会の世話役をしているので格好が悪いから新しい入れ歯を作ってください」と言っていた。

格好さえ繕えればいいのだろうか?

歯医者に成り立ての頃、叔父の歯科医院に勤務していたが、同じようなことを言う老人がちょくちょくいた。

「もう歳だから保険の入れ歯で結構です」と言う老人に、院長の叔父は決まってこう言っていた。
「もう歳だからこそ、いい入れ歯が必要なんじゃないか、その歳でいまさら恋愛も出来ないし、歳を取るとしっかりおいしく食べる事がとても重要なことじゃないの、お金を持って墓には入れないよ」と冗談交じりに言っていた。

先日友人から聞いた話で叔父の言っていた事を思い出した。

点滴で栄養を血管に注入しても1日1500キロカロリーしか体の中には吸収されないそうだ。
それ以上は全部排泄されてしまうらしい。
だから普通食が食べられない人にはミキサーでどろどろに潰した食事を与え、それすら食べられなくなったら、胃に穴を開けてでも栄養物を直接胃に注入する。

消化器官に入った栄養物はあまり上限なく体内に吸収されるそうだ。

健康な老後を過ごすために、おいしく食べることができることは非常に大切なことではないだろうか?

残念ながら健康保険の制限の中で充分な入れ歯を提供する事は困難である。

「自費の入れ歯なんてもったいないから保険でいいです」と言われると、「自分の体になんて投資する価値がないといっているのと同じだよ」と言う有名な歯科医もいる。
「もっと自分を大切にしてあげましょう。」とその先生は患者さんに言う。

東京でも入れ歯名人として有名なその先生の入れ歯は
上下総入れ歯で総額280万円なり。
医院に見学に行ったときこんな光景があった。
「帰って主人に相談しなければ決められない」というご婦人に「よしわかった、いい入れ歯を作ってもらえ」とご主人が言ってくれたらそれだけ愛されている証拠です。
もし駄目だというなら、これまでの夫婦関係の結果かもしれないね。
と平然と言うその先生の言葉にびっくりした。
今までそんな考え方をしたことがなかったが、一面ではそういう考えもあるのか・・・


夫婦関係まで入り込んでいく気はないが、もう少し自分の体・自分の健康を大切にした方がいいと思う患者さんの多い事・・・


この話を読んであなたはどう感じましたか?

健康幻想

  • 2006年08月15日(火)

青山学院大の福岡伸一教授がソトコロ6月号におもしろいコラムをかいておられたのでご紹介する。

「食べることとは情報を解体すること」

私たちが食べ物として口に入れるものは、肉にしろ、穀物にしろ、果実にしろ、すべて元はといえば他の生物の身体の一部であったものだ。
そこには元の生命体を構成していたときの情報がぎっしり書き込まれている。
ここでいう情報とは、具体的にいえば、タンパク質の構造のことである。
タンパク質の構造情報が生命の機能を支えている。

もし、他の生物のタンパク質がそのまま私たちの身体の内部に取り込まれればどうなるだろうか。
当然のことながら、他者の情報は、私たち自身の情報と衝突や干渉を起こし、さまざまなトラブルが引き起こされる。

アレルギー反応やアトピー、あるいは炎症や拒絶反応とはすべてそのような生命情報同士のぶつかり合いのことである。

そこで生命体は、口に入れた食物をいったん粉々に分解することによって、そこに内包されていた他者の情報を解体する。

これが消化である。

消化とは、腹ごなれがいいように食物を小さく砕くことがその機能の本質では決してなく、情報を解体することがほんとうの意味である。

タンパク質は、消化酵素によってその構成単位、つまりアミノ酸にまで分解されてから吸収される。
タンパク質が「文章」だとすれば、アミノ酸は文を構成する「アルファベット」に相当する。
I LOVE YOU という文は、I ,L ,O ,V ,E ・・・に分解されることによって情報をいったん失う。

中略

I LOVE YOU という愛の言葉はそのまま受け入れられる事は決してない。
分解されたアミノ酸は、そのまま順列だけが組み替わるのではなく、散り散りばらばらになって、他から来たアミノ酸と離合集散しながら全く別のタンパク質を構成する。

だから身体の中の特定のタンパク質を補うために、外部の特定のタンパク質を摂取するというのは全く無意味な行為なのである。

たとえば、皮膚に張りを与えているのはコラーゲンという弾性に富んだタンパク質であり、加齢にともなって皮膚がたるむのはコラーゲンが不足するからなので、コラーゲンを積極的に摂ることがアンチ・エイジングの切り札である、という言い分はほとんど虚しい。
食べたコラーゲンは決してそのまま自分の身体のコラーゲンになることはない。
コラーゲンは消化されてグリシン・グルタミン酸・プロリンなど何の変哲もない、どこにでもあるアミノ酸となるだけであり、再び、コラーゲンになることはない。

これと同じ構造の「健康幻想」は実は至る所にある。

タンパク質に限らず、食べ物が保持していた情報は消化器官でいったん完膚無きまでに解体されてしまう。

関節が痛いからといって、軟骨の構成材であるコンドロイチン硫酸やヒアルロン酸を摂っても、口から入ったものがダイレクトにそのまま身体の一部にとってかわることはあり得ない。

構成単位にまで分解されるか、へたをすれば消化されることもなく排泄されてしまう。

私たちがこのような健康幻想に取り憑かれる原因は何だろうか。
ここには、身体の調子が悪いのは何か重要な栄養素が不足しているせいだ、という強迫観念があるように思える。
そして、その背景には、生命を、ミクロな部品が組み合わさった機械仕掛けと捉える機械論が抜き差しがたく私たちの生命観を支配していることが見て取れる。

健康を、強迫観念から解放し、等身大のライフスタイルとして取り戻すためには、私たちの思考を水路づけしてきた生命観と自然観のパラダイムシフトが必要なのである。・・・

後略

昨日子供の頃からの親友が私の体調を心配して家に来てくれた。
彼も体調を崩したことがあり、一時は95キロまで太ったが今はあるアプリメントと出会って80キロまで減量でき、人間ドックでもほとんど問題なしとなり、心身共に快調だと言うことだった。
私も今まで私の体調を心配した知人たちから紹介されたいろいろな物を試したが漢方と出会うまではあまり有効打がなかった。
福岡教授の言う健康幻想に振り回されていたように思う。
漢方などの東洋医学では陰陽のバランスが崩れ、気・血・水のバランスが崩れることによって体調が崩れると解釈する。
せっかく私のことを心配して来てくれた友人には悪いのだが、今の私にはサプリメントより心と体のバランスを取ることが心身の健康に大切なように感じる。

天下り

  • 2006年05月25日(木)

先日ラジオに大手パチンコメーカー女性社員が匿名で出演していた。
パチンコ業界の裏情報を内部告発するような内容だった。
学生の頃は時々パチンコ屋に出入りすることもあったが、もう30年近くのぞいた事が無い。
昔は店の入り口付近の交換機で玉を買って気に入った台で遊んだが、最近はパチンコ台に直接現金かプリペイドカードを投入すると玉が出てくるらしい。
現金の方がすぐ遊べるので便利なように思うが、最近のパチンコ店の9割がプリペイドカード型らしい。
何故なんだろう?
女性社員の解説で謎が解けた。

パチンコ店に設置できる機種を許可するのは地元の警察だそうだ。
パチンコ台を作るメーカーに警察OBが天下っているらしい。
警察OBの勤めるパチンコ台メーカーがプリペイドカード型の台を作っているので、現職の警察はOBの顔を立ててプリペイド型の機種を店に設置できる機種に選定しているということであった。

さらにこの認可は期限が3年ということで、まだまだ使えるパチンコ台を入れ替えしなければならないため、弱小のパチンコ店は台の入れ替え資金が調達できなくなりつぶれてしまうということであった。

国は規制緩和推進と言いながら実際は天下りの会社を儲けさせるために規制を強化しているということだ。

そういえば最近あちこちに大型のチェーン店が出店する一方で小さなパチンコ店がどんどん潰れているのを見かける。

パチンコ業界でも二極化が進み、資本を持った一握りの勝ち組が更に規模を拡大し、商店街の一角にあった小さな店は無くなっていく。
その陰に警察OBの天下りが大きく関わっていることに驚いた。

我々医療業界では2011年には診療報酬をオンラインで請求しなければならなくなるが、現在使っているコンピュータは使えなくなるらしい。
全国の医療機関が一斉に一つの機種を導入しなければならないとしたら、そこには大きな利権が絡んでくる。

厚生官僚の天下り先が選定されることは充分考えられる。

現場で必死にがんばっている人たちを踏みにじって一握りの人間が甘い汁を吸うようなことは絶対にさせてはならない。

この国がこんなにもゆがんでしまったのは役人の天下りに大きな原因があるように思う。