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子供の虫歯予防

  • 2005年05月30日(月)

先日の読売新聞 論点に日本歯科大学の八重垣教授の論文が載っていた。
引用させていただきながらコラムを書こうと思う。

『まもなく虫歯予防デーだ。
歯の健康は、病気から健康を守る行動、いわゆる保健行動と密接にかかわっている。

例えば、保健行動が身につき、自己管理できている人は、歯を診るとすぐわかる。
歯の清掃は、最も基本的で簡単な保健行動である。

しかし、毎食後の歯磨きや、半年に1回の歯石取りを怠れば、歯はすぐに汚れてしまう。

したがって、地道で自主的な保健行動が身についている人には、清潔な口の人が多い。

このような人々は、他人まかせの健康法ではなく、積極的な健康管理を行っているに違いない。
昨年、私はカナダから10年ぶりに帰国した。

久しぶりに日本の人々の口を診たが、歯垢や歯石で汚れた人が多いのに驚いた。

カナダでは国民の54%が1年に1回以上歯科医を受診し、歯石除去を受けている。このためカナダ人には歯や口のきれいな人が多い。ところが、わが国における受診率は16%にすぎない。

別の調査では、ニューヨーク・マンハッタンのビジネスマンと東京・大手町の日本人ビジネスマンとを比較した。
ニューヨークでは、ほぼ全員が歯の定期健診を受けているのに対し、東京のビジネスマンでは、6割以上に
歯の健診の習慣がなかった。

どうやら多くの日本人には「健康を守る保健行動」が根付いていないようである。
そればかりではない。
たとえば、私のカナダの教え子は歯科医になってわずか一年余りで、早期口腔ガンを2例も見つけたという。
カナダ人は定期的に歯の健診を受けるので、早期に発見される可能性が高いのであろう。

また健診では口臭も発見・予防できる。

口臭は本人が気づかないまま、他人から疎まれる原因となる。
人間関係が複雑な現代社会では、注意すべき疾患である。
私の研究では、口臭は歯周病の原因となる。
歯周病になると口臭はますます強くなる。
さらに困ったことに、強い口臭の主成分である硫化水素には発癌性があることが、最近あきらかになってきた。

口腔ガンの原因になりうるだけに、たかが口臭とあなどってはならない。

近年の出生率の減少に対し、将来の経済不安が叫ばれている。
でも、何か違う。
衛生学の私から見れば、未来の日本人の健康状態の方に危惧を持つ。

日本の将来にとって貴重で大切な数少ない子供だ。
だからこそ、彼らを健康に育てることを、今の時代の優先課題としないといけない。

少なくとも子供たちに「心身の健康を自分で守る自己管理」を動機付けるべきであろう。

一生を通じ健康増進するには、成長に応じ保健行動を学ぶ必要がある。
偶然にも「歯磨きと洗顔」は最初に身につける基本の保健行動となっている。

すなわち、虫歯予防は子供にとって、人生最初の健康管理の教材なのである。

歯磨きは心の健康の入り口であることも分かってきた。

ところが、「歯磨き行動」を単なる生活習慣や義務として身につけているか、あるいは自ら積極的に健康を守るための「保健行動」とするかで違いが生まれる。
すなわち、健康を守る能力(生きる能力)に大きな差が生じるであろう。
そこで私のグループは、子供たちが「歯磨き行動」を人生最初の「保健行動」とするため、
世界規模の疫学調査を行っている。
厳しい時代を迎える子供たちだが、大人になった時、我々以上に「生きる能力」を身につけていれば日本の将来は明るい。』

さて読み終えていかがでしょうか?
アメリカのキッシンジャー氏が回顧録の中で「日本の政治家の口臭のひどさには困った」と言っていたそうだが、政治家に限らず相対的に先進国の中で日本人は歯を大切に考えていないようである。
当院に定期的に歯石除去で来院される患者さんでも何度言っても口の中の不潔な状態が改善しない方もある。
その多くが 学校の教師の方である。
子供の保健行動を指導する先生方のお口の中が歯石だらけ、虫歯や歯周病で ひどい口臭というのではお話にならない。
その先生達にどうアプローチしていけばよいか、保健指導の難しいところであると思う。